歴史上の、それなりに有名な男を、
塩野流に解釈したエッセイのようなもの。 面白いのは塩野の得意分野であるイタリア系ではなく、 ちょと縁遠い人たち。 歴史的な背景を一般人レベルで知っている程度である故に、 自由な発想で人物を眺めていて、 そのへんが何とも味わいがある。 「浅倉にやられて逃げ帰るときの信長に、軍の殿(しんがり)を自分に命じてくれるよう願った秀吉(中略)敗軍の殿をつとめるということは、もうほとんど死を意味している。わたしを、あなたのために死なせてくれ、と言っているのである」p.81 そうなのよね。殿に対する忠誠って、 ようするに愛だと思うのよ。 その殿の為に戦える(=死ねる)のかってコトでしょ? カリスマ性のある殿というのは、 よーするに愛(命)を捧げたがる部下が続出する殿。 騎士団の繋がりも、基本そういう路線だと思うんだよね。 男の友情と女の友情の違いって、 そこに愛が入り込みうるか、という違いなのかも? 「認められることなしに、芸術は育たない」p.165 そうそう。この本読んで初めて知りました。 塩野七生の名前、「ななお」ではなくて「ななみ」と読むんですね。 ずーっと「ななお」だと思ってたよ。 採点:★★★☆☆
またしてもかっ飛ばしてます、最聖コンビ。
「え?だってそれ、地獄の釜が開いて、あの世から霊が帰ってきちゃう行事だから」 うんうん、そういうイベントだよね。 でも、「徒歩で?」と聞いてくるイエスがまた、素敵。 確かに乗り物は気になるところだろうけど、 フツーは「霊が帰ってこれる」ってコトの方が 吃驚ポイントなのでは…。 いや、まぁ、聖人ブッダ&イエスには 霊が帰ってくるのは驚きじゃあないのか。 そうか、そうだな。わはは。 「やっぱり同じチョコをあげるなら…まず、彼を極限の飢餓状態にしてから、渡すといいかもね!」 うん。ああ、そうね。ま、そうよね。 嗚呼、彼らは彼らなりに自分の人生経験に照らして、 現在日本のカルチャーを楽しんでいるってのが、良いわ〜。 バレンタイン、降誕会、100円ショップ、映画デー、 お盆、ネットゲーム、りんご狩り。 …やべぇ、アタシの方が、日本のカルチャーを 味わってないよ…。 採点:★★★★★
やっぱりポアロは面白いなぁ。
「やれやれ。マドモアゼルにいってあげて下さい。私が余人の追随を許さぬ、空前絶後の、ユニークな大探偵だと」こんな会話も 嫌味ったらしくなく、ポアロ流のおちゃめで通るあたり、 絶妙なキャラクターだよね。 なんたって特別な灰色の脳細胞の持ち主ですし。 「他の可能性をすべて排除したうえで、ただ一つ残った可能性を取り上げて、これ以外にはない、だからこれが真実だと…」p.140 探偵小説で時々登場するアナグラム(文字の並べ替え)とか、 今回の事件のトリックの鍵なんかは、 やっぱり原語で読んでいたら閃くものがあるんだろうか? 例えばニックが隠していたことの一つは、 物語の展開からおおよそ想像がついたけれど、 トリックの鍵は、アレは分からんよなぁ。 それと、ニックの従妹マギーは殺される為だけに登場したみたいで ちょっと可哀想。あんまり人物描写もしてもらってないし。 そーいえば。マーガレットの略称がペギーってのは どうもピンと来ないぞー。 採点:★★★★☆
ルヘイン『シャッター・アイランド』の
巻末解説に、精神病者のミステリーとして 本書の名前が挙がっていた。 その流れで読んだのだが・・・う〜ん。 「私は20歳の娘、億万長者の相続人です。私がこれから物語る事件は、巧妙にしくまれた殺人事件です。私はその事件で探偵です。また証人です。また被害者です。そのうえ犯人なのです。私は4人全部なのです。いったい私は何者でしょう?」p.1 トリック?としては面白いと思う。だが、 最初から「私は4人全部」と答えが明示されてしまっているので、 読んでいく途中で「えっ?もしかして探偵であり犯人なの?」 というような驚きを持てない。 それどころか、全ての描写で「彼女は何者か」 ということダケに注目してしまいがち。 謎解きとしてはそれで良いのだが、 小説を読むということでは物足りない。 小説そのものも、「私が何者なのか」が不明なまま展開するため 事件に至る犯人(あるいは被害者の)心理描写が弱くなりがち。 主人公ミ(あるいはド?)の記憶喪失も、 小説のトリックの為の作為であって、 事件としての必然ではないように思えて残念。 勿論、ミ(もしくはド?)が記憶喪失になったからこそ この事件が事件なのだけれども。 採点:★★☆☆☆
つい先日、
マサチューセッツ矯正院の日常を収めた ドキュメンタリー映画『チチカット・フォーリーズ』 (監督:フレデリック・ワイズマン)を見た。 年代こそ本書『シャッター』が1954年、 『チチカット』は1967年と多少の開きがあるが、 精神を病んだ犯罪者の収容施設が舞台ということで、 なんとなく『チチカット』な世界をイメージして この小説を読み進めた。 が、ラスト1/5位のところに来て「袋とじ」の 黄色いページが挟まっていて、えっ?となる。 主人公ティディの思考が時折ビミョーにズレてゆき、 二重の声が聞こえてくるふうなのは 第六感が働きすぎるにしては・・・とは思っていた。 けど、これ、謎解き小説だったのか。気付かなかったよ。 「彼女を真に見ることを拒んで、彼ら全員の人生を台なしにした。(中略)彼はそれを見ようとしなかった。(中略)たったひとりの恋人である彼女を置き去りにして、みずからを侵食していく心を放っておいた」p.400 切ない話だね。 採点:★★★★☆
・・・え?
すいません、オチが全く理解できないんですけど。 17歳の少年と12歳の少女の、 ゆき子とみつおの、 アーケラとモーグリの、レミとカピの旅が、 昭和20年代の現実と、それを過去とする現在の 曖昧に混濁した世界のコトであるのは、それは分かる。 でも。 ええええ? なんで、ラストがこうなの? 単に私の理解力が低いだけなのか? 昭和20年代の旅の話は実に面白い。 ちょうどこの本と『邪宗門』を同時進行で読んでいたので、 その時代の雰囲気に浸れたせいもあるだろう。 一つ一つの物語展開は 昭和史の断片として興味深く読んだが、 小説全体のパワーとしては今ひとつパンチに欠けた。 もう少し時代をえぐって欲しかったのだが。 「どこだか遠い砂漠の国に、死ぬのを待つ穴があるという。病気や絶望や悲哀で死にたくなった人間はその穴に行き、身を投じる。アリジゴクの素に似た、スリバチ状の砂地の穴なので、一度落ちたら、いくら後悔しても這いのぼることはできない。(中略)人間社会にはそういう穴が必要なんだ。なにかに絶望して死にたいと思うとき、あの穴に行きたいほど死にたいのかどうかと判断する目安にはなるじゃないか」p.194 採点:★★★☆☆ Tags:近現代
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